総括・評価
1.「GRAND VERDE」の評価
築3年を機に、オーナー・入居者の立場からデザイナーズマンション「GRAND VERDE」を
「快適な都市型集合住宅」と「差別化・拘り・セールスポイント」に関して、E、D、C、B、A
の5段階評価をしてみた。
C : オーナー・入居者がイメージする標準的な都市型集合賃貸マンションと同等。
B : 標準的な賃貸マンションと比べてかなり良い。
A : 標準的な賃貸マンションには比肩する例が無いほどの最高評価。
1.1 「快適な都市型集合住宅」は実現できたか?
イ) 敷地の条件 B
ロ) 南向き、日当たり、風通し A
ハ) スケール感・開放感 A
二) 静か、明るさ、清潔感、健康的 A
ホ) 生活動線と施設・設備・機器 B
ヘ) 防犯・防災・プライバシー B
ト) 管理・運用(注1) A
1.2 「差別化・拘り・セールスポイント」は?
イ) 合理的設計、優れた色彩感覚で「Good Design Award」を
受賞したデザイナーズマンション(注2) A
ロ) 1階の諸共用施設(注3) A
ハ) 住戸毎に付属する1階のトランクルーム A
二) シンプルな居室形状、高天井高、南北大開口扉 A
ホ) 建物外壁より内側に設けられた1住戸南北2バルコニー B
ヘ) ガラスの扉・壁、高級タイルの床・腰壁、大型浴槽の浴室 A
ト) 主婦視点のキッチン他の住宅施設・設備 A
チ) 可動式両面収納 B
リ) 防音仕様の全窓・扉・換気設備 B
ヌ) スキップフロア、シーリングファン B
(注1)設備・機器のクレーム対応、施設・設備の定期点検・保守と関係官庁への報告、
建物内外の点検・整理・整頓・清掃、規約・規定の遵守、連絡事項掲示。
(注2)賃貸マンションでは、毎年全国で数件~十件程度の受賞がある。
(注3)ギャラリーホール、ショーウインド、アプローチ、サロン、トランクルーム、駐輪場他
2.「GRAND VERDE」マスメディア掲載
イ)2012年2月 「LiVES」vol.62 「ケヤキの前の集合住宅」
ロ)2012年3月 「全国賃貸住宅新聞」3月12日号 「ケヤキの前の集合住宅」
3. 初期不良
3.1 浴室ガラス扉
いくつかの住戸で半年ほどの間に、洗面室・浴室間のガラス扉(巾65cm高さ200cm)の蝶番が緩んで、
浴室床を擦りそうになった。
サイズ・重量とも大にも拘らず、しっかり固定しなかったことが原因。他住戸の蝶番も締めなおした。
3.2 浴室排水トラップ
1年の間に浴室洗い場の排水口トラップが固着しているのが見つかった。
当「GRAND VERDE」の浴室は非ユニット式で、コンクリート、給排水、防水加工、モルタル塗り、タイル
張り、浴槽設置、シャワー等全てが現場工事だから、数か月間の入浴で、モルタル・タイル張りセメント灰汁
が排水と共に流出して、トラップを固着させた様である。
全室セメント灰汁を除去した。その後トラブルは発生していない。
4. 予期以上の効果があった点
4.1 騒音レベル
全窓・扉・換気設備に防音仕様を使ったので、居室の騒音レベルは図書館の読書室以上の静かさで、甲州
街道に面していることが嘘のようである。
築2年目の夏の午後7時ころ2件西隣で火災が発生し、消防車・救急車・パトカー等20台以上が集結して
消火作業等に当たった。この時の鐘・サイレン・拡声通報に大部分の居住者は全く気付かず、一人だけ欅街
路樹に映った赤色回転灯の光で、北側バルコニーに出て漸く気付いたほどである。
基本的には良好な防音性能は必要だが、近隣に類焼しがたい環境とはいえ、万一の際に気付かないほどに
必要なのか、少し疑問も残った。
4.2 南側に設けた浴室
明るさ・風通しを図って南側に設けた浴室は良く乾燥するので、ランドリーパイプまで取り付けたが、
タイル目地が変色し難いことにも気が付いた。カビがはびこり難いようだ。
4.3 結露し難い北側の窓・扉
機密性が高いコンクリート住宅では、冬季には北側扉・窓に結露することが多い。
「GRAND VERDE」の場合、ペアガラスの窓・扉の断熱性が高い、居住空間が大きい、IHクッキングの
使用、24時間換気などの理由かと思うが、殆ど結露を見ない。
4.4 住居のスケール感・風通し
元々南北の風抜けが良い敷地だったが、地上では風を感じない時でも住居内は信じられない風通しの
良さである。真夏の暑い日でも日が落ちれば直ぐエアコンを止められるほどだ。
居室の高天井とシンプルな形状・南北の大開口扉・可動式両面収納の上部空間・南北バルコニーなどの
住居構造からくるスケールの大きさにも起因している。
5.想定外の問題と対応
5.1 旧照明器具とLED電球
世は挙げて省エネだ。白熱電球を使う設計だった非常階段の照明にLED電球を使用したところ、チラツキ
がひどく、夜間照明の用をなさない。始めは電気工事会社にも原因が判らず対策に苦慮したが、「この照明
器具にはチョークコイルが組み込まれている」との情報を得て、急遽オーナー自身が調光対応LED電球に
交換して解決した。
5.2 防災・避難設備の法定定期点検
共用部火災報知等の点検は定期点検時には必ず実施されるものの、住戸内の点検には、実施日時・点検
内容・注意事項等を掲示板に貼って定期点検の意味・重要性説を説明し、各戸に在宅を要請して居住者立会
いの下に実施している。然るに、仕事上・個人の都合・点検者の住居内立ち入りを嫌う・等の理由で住戸内
設備の点検が出来ないことが多い。
前回定期点検が出来なかった住戸には、万障繰り合わせて時間を割くよう強く要請するのだが、それでも
なお応じてくれない居住者が出る。いざという時の居住者自身の命に係わる問題にも拘らず、結構他人事・
絵空事のように思う無関心を、どのような対策をすれば応じてくれるか?適切な対策が中々見いだせない。
6.建設費用対効果(収益性)の考察
以下のように「GRAND VERDE」と「標準的な賃貸マンション」について、延べ建築面積、建築坪単価、
建設費総額、年間収入、年間経費(不含建物・設備の減価償却)、をベースに大雑把に比較してみる。
「GRAND VERDE」の場合の延べ建築面積(内 GRAND VERDE 特有の共有施設部分は20坪)を195坪、
「標準的な賃貸マンション」の場合の延べ建築面積を175坪(195-20=175坪)とし、インフレ・デフレ
賃料・管理費の値下がりを考慮しないで両者を比較すると、
A) 建築費の差 2,600万円(= GRAND VERDE の建築費総額ー標準的マンションの建築費総額)
B) 年間収入差 100万円(= GRAND VERDE の年間収入額ー標準的マンションの年間収入額)
(注)「年間収入差」とは、主に空室率の差に起因する差額。
他項目の比較や他角度からの見方も必要だが、収益性の単純比較では「GRAND VERDE」はやや不利かも
しれない。オーナーの主義・趣味の問題と言われればそうかもしれない。しかし厳しくなる一方の賃貸
市場を考えると、「快適な住まい」に拘った「これからのデザイナーズマンション」の一つの方向を示した
ものと考えている。長期にわたっての比較においては大差なしとみている。
7.「GRAND VERDE」を一言で表現するなら?
駅2.5分、明るさ・日当たり・風通し最高、高い天井・大きな扉窓家具で圧倒的スケール感・開放感、
豪華で重宝な居住設備、安らぎと信頼を与える共用施設群、独立特大トランクルーム付、グッドデザイン賞
を受賞した1 ~ 2ランクハイグレードの稀少・高級デザイナーズマンション。